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民事信託の仕組みと活用例

  • 執筆者の写真: 元博 大塚
    元博 大塚
  • 2023年4月23日
  • 読了時間: 3分

1 民事信託とは

「民事信託」とは、自分の財産を誰かに預けて、管理や運用をしてもらい、そこから生じた利益を受け取るという形の信託です。投資信託など、営利を目的とする「商事信託」とは区別されます。また、ほぼ家族間で使われるため、「家族信託」とも言われます。

民事信託は目的に応じて柔軟に設計できるため、近時注目されています。有効な活用方法はいくつかありますが、ここでは3つの活用例を紹介します。

なお、財産を預ける人のことを「委託者」、財産を託された人のことを「受託者」、受託者が財産を管理・運用することによって利益を得る人のことを「受益者」と言います。


2 活用例①:親が亡くなった後の障がいを持つ子対策

民事信託を活用することにより、親である自分が亡くなったあとの、障がいを持つ子どもの生活の心配を解消できます。

親である自分が亡くなったあと、子どもの生活をみてくれる人に財産を託し、その人が子どもに定期的に財産を引き渡すという信託契約を締結することで、安定した生活を保障することができます。

なお、子どもの生活を託せる人が身近にいない場合には、信託商品である「特定贈与信託」を利用することが考えられます。これは、親や親族などが信託銀行等に財産を信託し、信託銀行等がその財産を管理・運用し、障がい者の方の生活費や医療費、施設利用料等として、定期的に金銭を交付してくれる制度です。この商品を利用すれば、障がいの程度に応じて、一定額まで贈与税が非課税になるというメリットを受けることもできます。


3 活用例②:認知症対策

民事信託は認知症対策としても有効です。

判断能力があるうちに民事信託を利用して金銭や自宅などの財産を託しておくことで、徐々に判断能力が低下し、あるいは判断能力を喪失しても、日常生活費の送金、自宅の管理や修繕、高齢者施設へ入所後の処分などの行為も、信託契約で決めた目的に従い、受託者の判断ですることができます。

ただ、民事信託はあくまで財産の管理・運用を託す制度であるため、認知症になったあとの身上監護を誰かにまかせたいといった場合には対応できません。身上監護をまかせたい場合には、任意後見制度を利用することが考えられます。


4 活用例③:事業承継対策

民事信託は事業承継にも利用できます。

民事信託を活用して事業承継を行った場合、現経営者が後継者に株式を委託して株式の配当を受けながら、現経営者自身も引き続き経営に関与する、という事を実現することができます。民事信託の契約において、委託者である自分自身を受益者に指定し、指図権についても自分に指定します。

こうすることにより、会社の経営権は後継者が握ることになりますが、委託者である現経営者自身は指図権を有しているので、引き続き会社の経営に関与することが可能となります。

信託が継続しているなかで、受託者が後継者としてふさわしくない者であると判断した場合には、信託契約を終了させることもできます。


5 まとめ

以上、民事信託の仕組みと3つの活用例を紹介しました。この他にも具体的な事例において、民事信託が有効な手法であるケースはあります。

このように民事信託は柔軟性の高い便利な制度ではありますが、具体的なケースに最も適した信託契約を作成するためには専門的な知識が必要になります。民事信託に興味がある、あるいは利用を検討している方は、専門家に相談されることをお勧めします。


 
 
 

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